応募結果発表

第 7 回 (締め切り/2002年5月31日)
総評
 今回は驚いたことに、中学一年生からの応募があった。企画書の文章もしっかりしており、しかも「大人の常識を疑う(物申す)」というテーマなのだから、驚きも一層であった(具体的なフレーズに沿った説明がなかったのが残念)。
 全体的にもユニークな切り口のものが多かったが、その分、企画書の内容がしっかりしているにも拘らず、潜在読者数の点で(書店での販売を前提にすると)選出できない作品もあった。この相反しがちな両者を両立させることが、企画を立てる際に最初にクリアしなければならない点でもある。 【田】

『仮面を脱ぐ家族』
ペンネーム HK
寸 評  寝たきりの祖父を介護する祖母が亡くなったところから物語りは始まる。両親が共働きであるため、日中は祖父の面倒を看る筆者。やがて祖父も亡くなり、両親と伯母・叔父とのあいだに出来する相続争い、そして民事訴訟へ。
 これだけなら、さして珍しくない――ある意味よく聞く話なのであるが、この筆者、自身障害者でありながら祖父の介護を経験し、福祉関係の学校に勤めながら司法試験合格を目指している(いた?)ということになると……。筆者なりの経歴・知識は勿論のこと、筆力にも期待が持てそうだ(「筆者の立場」より)。
 ドキュメンタリーでいくか、自伝的エッセイ風に書くか、はたまた小説に仕立てるか……、いろんな興味が湧いてくる。 【田】
『ドイツの田舎暮らし』
ペンネーム ワタシ
寸 評  このテーマは、ジャンルとしてありがちである。競争も激しい。企画会議をパスさせるためには、切り口が必要である。
 東京書籍でシリーズ出版されている「世界紀行シリーズ」は、イギリス、フランス、アメリカ、デンマークなど、世界各国の風土・文化・民俗などを、カラー写真を交えて刊行しており、『地球の歩き方』とは少し違ったテイストが受け、ロングセラーとなっている。今回、渋谷のブックファーストの1F店頭をはじめ、「ワールドカップブックフェア」と題して、世界の国旗も掲げながら大々的に、展開していた。
 しかし、今回の企画『ドイツの田舎暮らし』だと、ちょっとスパイス(押し)が足りない。確かに、企画意図にもあるように、「次回のワールドカップを意識する」のはよいが、「ドイツ=○○○の国」というイメージは湧かない。しかも、「ドイツで田舎暮らしをしてみたい」という人がどれほどいるのか? ということもある。
 ここは、光文社知恵の森文庫の『バリ島バリバリ』『ばんばんバンコク』のように、イラストやユニーク写真を織り交ぜて、おもしろおかしくまとめたほうがベター。米原万理氏のようなテイストを意識すれば、パスしやすくなるだろう。是非、彼女の既刊書(ex.『魔女の1ダース』『ロシアは今日も荒れ模様』『ガセネッタ&シモネッタ』……)も参考にして欲しい。
 企画者は、メールマガジンも発行しており、経験も豊富で期待できる面も多々ある。材料は良いのだが、料理の仕方・切り口を変えて練り直せば、企画者も掲げているように、次回のワールドカップで燃焼して、ロングセラー商品になる可能性もあるかも。 【沢】
番外作 『大樹の陰に大雨注意』
ペンネーム 川本陽子
アドバイス  東○におけるリストラを舞台に、現実的な人間模様を描こうという企画である。私の友人、知人にも「被害者」がいるので、とても興味深いが、こういうテーマにおいて、東○という会社の話題性がきわめて低いのが残念である。これが、たとえば、リストラをめぐる訴訟、OBの大活躍、刃傷沙汰(!?)などの事件が発生していれば、話題を呼ぶことができ、商業出版としての可能性を見出すことができるだろうが、実情はそうではない。そういう点を踏まえると、企画に一工夫加えることが要求されるだろう。
 たとえば、同期入社全員のこれまでの来し方を調査して、カタログ風にまとめてみるのはいかがだろうか? 早くに転職した人、リストラされた人、華麗な転職を遂げた人、いまだ社内で燻っている人……それぞれの人生をきわめて客観的な情報だけで描くのである。感情移入をせずに、そのまま表現するところがポイントであるが、けっこう迫力のある一冊になると思う。 【池】
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