応募結果発表

第 3 回 (締め切り/2001年1月末日)
総評
 今回、元サラ金会社支店長、神経科クリニック院長など説得力のある斬新な切り口の企画書があったことは新たな展開だ。しかしながら、一方では、「結婚しないシングルウーマン」「お見合いに成功するためには」「悪戦苦闘の育児日記」など誰でも書ける類のものも多かった。「その人でなくても書ける」という企画ではPASSの道は険しい。特に「生きるヒント」的なものは著名人以外は売れないと思ってほしい。
 くだらないことでもいい、パイが小さい分野でもいい、こじつけでもいいから、自分だけが書ける業界話、体験話を探してみよう。例えば「錦鯉のことは任せてください」とか「ハマチの養殖のことなら誰にも負けない自信があります」とか……。書店をウオッチングして、ありそうでないスキマ企画を考えてみよう!
 書店でベストセラーになっている商品を真似していては二番煎じになってしまい、例え、商品化になったとしてもすでに鮮度は落ちている。「今、キレる子どもが多いから教育書がいいのでは?」「今年から小学校でもIT教育が必須になるからそのテキストがヒットする」とブームに乗って企画を書くのはよそう。「ユアブーム」「これまでブーム」ではなく、「マイブーム」で「これからブーム」こそが「5時から作家」志望者に求めたい企画のタマゴであり、それらを編集者と一緒に育てて孵化させて行きたいと思う。ベストセラーはあくまでも参考材料だ。
 最後にPASSしやすい企画・ネタを参考までに挙げておくと、
  1. 既にありそうなのだがまだ出版化されていない、レアなオリジナル企画。
  2. ややアンダーグランド、コミカル、シニカルなネタ。
  3. 著者の立場と、企画内容が合致している斬新な企画。
  4. 意表を突くタイトル、ハッとさせるアイデア。
  5. 単なる主張ではなく、他人が読んですぐ役立つ知恵のレベルにまで昇華されているもの。
 ……などである。また「こんな人に書かせてみたい」というディレクション的なアイデア(最終的に自分が書かない)もオーケーだが、その場合は該当する「著者」に了解をもらっておいてほしい。
 では次回(第4回)に期待している。【5時から作家塾 審査員一同】

『サラ金会社の夜はふけて』
ペンネーム 沙羅金太郎
寸 評  平々凡々の業界ではなく、波乱万丈系で、しかも誰もが利用していそうで、実はその内情はあまり知られていない。サラ金業界の企画はレアで、編集者のみならず、読者の興味をひく。系統的には、青木雄二、野口誠一、横田濱夫系のTASTEを期待するが、いずれにせよ、重版ヒットする可能性を秘めているスキマ企画だ。
 サラ金という材料をいかにして料理するかであるが、「初心者のための明るいサラ金との付き合い方」「サルでもわかるサラ金業界入門講座」など、実用書的に盛り付けをし、そして、章末に「こんなお客がいた」「ヤクザがやってきた日」「サラ金強盗珍プレー好プレー」など、雑誌のTASTEで味付けをしても面白いだろう。
 今や、学生から中高年まで幅広く利用しているので、NEEDSはあるネタだ。週刊現代、週刊ポストの特集ではよく見かけるが、まるまる1冊サラ金というのもありなのではなかろうか? 文庫にすれば、さらに通勤電車などでも受けるだろう。
『老人介護で悩む家族・デイケアへ行こう!』
ペンネーム SS
寸 評  この企画は、まず著者の立場がユニークで関心を抱かせた。神経科クリニックの院長であり、東大法学部の学生というまさしく2足のわらじを履いている。忙しくて書けるのか? とも思うが、だからこそ説得力があるのでは? という審査員の声も多くあった。ただ、類書は少ないようで結構ある。また、果たして悩んでいる人はこのような本を読もうとするだろうか? という意見もある。例えば、「この新技術で絶対視力は回復する!」「ペインクリニックで腰痛を治す本」などがあるが、これらの本は立ち読み止まりが多い。なぜか? 「百聞は一見にしかず」「論より証拠」で本を買って読むよりも、病院で診察したほうが早くて効く、というケースが多いのだ。
 ここは、変化球路線を勧めたい。この手で売れている著者は藤臣柊子だ。「精神科医へ行こう!」「みんな元気に病んでいる」はコミックエッセイで、女性を中心に重版ヒットを重ねているが、このように適度なイラストやキャラクターを用い、「デイケアって何だ?」から「体験シミュレーション」まで具体的にしかもわかりやすくコミカルに描いていく内容の方が、読者の食いつきは良いと思われる。最近、経済本、株本、就職本、パソコン本などどれを見ても難しく書いている本は、読者の目は勿論のこと、書店も即返品というケースがレアでなくなってきている。著者の立場と、中身のTASTEをうまくミックスさせ、インパクトのある内容にしていこう。
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